1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。 夕暮れ時を黄昏(たそがれ)時というのは「誰ぞ彼」から来ている。古い言葉でカワタレともいい、こちらは「彼は誰」である。あれは誰かと尋ねるのは、化け物を警戒する意味も含んでいたように思うと、民俗学者の柳田国男が述べている▼恐ろしい者に出くわしやすい夕暮れには「逢魔(おうま)が時」の言い方もある。昼は人間の時間帯だが、夜の闇は化け物たちのもの。その境目で両者が遭遇しかねない。「大禍時(おおまがとき)」の字をあてるのも大きなわざわいを恐れる気持ちからだろう ▼交通の世界にも大禍時があるらしい。警察庁によると、車と歩行者の死亡事故は日没の前後に最も多く、1時間あたりで見ると昼間の4倍にのぼるという。視界が徐々に悪くなる時だ。歩行者に気づくのが遅れ、距離の感覚も鈍るという「魔」が忍び込む▼こうした死亡事故のほとんどは道路の横断中に起きている。なかでも横断歩道のないところで渡っていた例が8割近かったという。夕闇が、もともとある危険を増幅しているのかもしれない ▼信号機のない横断歩道で車がほとんど止まらない。まるで車優先と決まっているかのように。ずっと言われてきた不満である。止まらぬなら、どこでも同じだと思って渡ってしまい、事故になる。そんな悪循環が起きていないか▼〈足もとはもうまつくらや秋の暮〉草間時彦。日暮れがすっかり早くなった。冬に向かい、目立ちにくい黒っぽい服も増えていく。大禍が起こらぬよう、車も歩行者も目をこらしたい秋の暮れである。 2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。 起こらぬ 目立ちにくい 境目 3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。 4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。 5.講師と逢魔が時について話し合いましょう。
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チョコとスマホ
ポカリスエットが海外に進出し始めた頃の苦労話である。インドネシアでは当初、さっぱり売れなかったという。スポーツの後や風呂上がり、二日酔いの時などに飲もう。そんな宣伝が通用しなかったと川端基夫(もとお)著『消費大陸アジア』にある▼熱帯の気候では運動して汗を流そうと思わないし、湯につかる習慣もない。飲酒が禁じられているイスラム教徒が人口の大部分を占めている。方針を変えて「断食の後の渇きに」と売り込んだことで、受け入れられていった ▼食べ物も飲み物も暮らし方との相性がある。こちらは現代の習慣に合わなくなったか。森永製菓の「チョコフレーク」の製造が、来年夏までに終了することになった。販売が不振になった理由は、スマホだという▼チョコで手がべとついてスマホを操作しにくいのが響いたと、森永は説明する。指をなめなめという味わい方は、もう流行(はや)らないのか。周りの若い人に聞くと、ポテトチップスを割り箸で食べることもあるそうだ ▼1960年代に生まれたチョコフレークは、テレビを見ながら菓子をつまむ「ながら族」を狙った商品だった。目だけでなく指先も常に忙しい現代のながら族には、受け入れられなかったか▼思えばスマホにより退場を迫られるものは少なくない。腕時計をする人が減った。地図を持ち歩かなくなり、ついでに道も覚えなくなった。スマホが視野に入るだけで集中力が落ちるという研究もある。ものを考える力まで、はじき出されないといいが。
(日本語) さよなら築地市場
1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。 さよなら築地市場 「また、あちらでね」「あっちでも、よろしく」。きのうの朝、東京の築地市場を歩くと、そんな言葉が耳に入ってきた。市場が移転する先の豊洲でもお付き合いを。お得意さん同士、声をかけあっているのだろう▼そこにある物の豊富さ、多様性、並べ方の美しさ……。「世界の博物館のすべてに匹敵する」と築地を評したのは文化人類学者のレヴィ=ストロースである。あまたの魚介を見るだけで楽しいと多くの人に足を運ばせた市場も、きょう、あすのセリを残すだけになった ▼築地にある小社は、いわばお隣さんだ。原稿につまって窓を眺めると、いつも目に入るのが築地市場である。それがもうすぐ「であった」になる。まあ、うまい魚を食わせる「場外市場」がなくなるわけではないし、と思い直す▼築地市場に隣接する場外市場は商店街から始まり、今や外国からの観光客でにぎわう飲食店街だ。「築地が移っても場外は残ります」との宣伝を最初に聞いた時には意外な気がしたが、考えてみればまちとは、そんなふうに続いていくのだろう ▼本屋や出版社の集まる東京・神田にはもともと、東京大学や一橋大学などの前身があった。学生が集まれば書籍の需要があり、学校が去った後も本のまちであり続けた。築地も魚のまちとして、さらに発展するかもしれぬ▼安全をめぐる議論が続き、遅れに遅れた移転である。築地市場の通称である「魚河岸」は豊洲に引き継がれるのだろう。食を支えるプロたちの活気とともに。 2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。 遅れに遅れた 引き継がれる 匹敵 3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。 4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。 5.講師と社会発展とともに消えてゆく物について話し合いましょう。
横綱の後半生
1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。 「猫舌なもので」と言うはずが「猫背なもので」。「コレクトコール」のつもりで「コレステロール」。筆者が子どものころ、相撲好きの間で輪島の迷語録をまねるのが流行した。土俵上の強さが圧倒的で、珍妙な言い間違えも魅力のように感じられた▼貴ノ花(故二子山親方)と同時に大関の座へ駆け上がり、「貴輪(きりん)時代」が到来すると盛り上がったころである。横綱にのぼり、5歳下の北の湖と「輪湖(りんこ)時代」を築いた。まわしは派手な金色、取り口も個性的だった。「上手を取るのが王道。下手では勝てない」という常識を覆し、左下手から強烈な投げを放った ▼派手な私生活も話題の的だった。高級外車で場所入りし、東京・銀座のクラブで湯水のようにお金を遣った。「自分の金でやったこと。何が悪いのか」と平然と語った▼まげを落としてからの姿は、時に痛々しかった。金色のパンツでプロレスのリングにのぼったり、タレント業に精を出したりしたが、その背に横綱の風格はなかった。元ファンには寂しさがぬぐえなかった ▼一代の横綱が亡くなった。享年70。晩年まで出身地の石川県を大切にした。現役時代からしばしば訪ね、子どもたちに相撲の魅力を伝えてきた。母校の小学校に土俵を寄贈し、中学では合宿で後輩を鍛えた▼苦境続きの後半生でも明るさを失うことはなかった。本紙に語った言葉が忘れがたい。「逆境という言葉は好きじゃない。人生なんてご飯と一緒。おいしい時もまずい時もあるんだからさ」 2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。 常識を覆し 寄贈 しばしば 3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。 4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。 5.講師と相撲について話し合いましょう。
(日本語) 言葉の重さ
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(日本語) 魚
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(日本語) 手品
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ふるさとへの思い
1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。 朝日歌壇賞と俳壇賞の二冠を持つオランダ在住の歌人、モーレンカンプふゆこさんの短歌に、〈窓口で法律用語を調べつつ日本国籍破棄を告げけり〉がある。33歳で異国に帰化した際の、凜(りん)とした決意だ。 作者はしかし、森で拾った木の実にまで望郷の念を募らせもする。〈手の中に団栗(どんぐり)といふ故国あり〉。ふゆこさんが思い続ける日本は、いつまでも、海外の同胞が慕う国でいられるだろうか。 パリ駐在から帰国し、3年ぶりに住んだこの国は改めて新鮮だった。朝のホームに整然と並ぶ人たち、静かな満員電車。小ぎれいで安全な街、眠らぬコンビニと自販機。このささやかな日常の安定こそ、守り伝えるべきものに見える。 国籍を捨てて、なお残る祖国とは何だろう。山河や文化、同じ言葉を話す懐かしい人々。その一切がつつがなくあるために、国家の仕組みと約束事がある。軍事同盟が「傘」なら、平和憲法は「繭」のように、日本社会に寄り添って平安を包んできたのではないか。 窮屈な繭を抜け出し、傘の下で舞うチョウになりたいと欲する人もいる。だが、世界の現実に合わせて理想を遠慮すれば、情けない現実が大きくなるだけだ。 朝日俳壇の選者だった石田波郷(はきょう)に、「焦土諷詠(ふうえい)」と称される作品群がある。〈香水の香(か)を焼跡(やけあと)にのこしけり〉。廃虚から書き起こした香り高い志は、四季の美しさや産業技術と並ぶ財産だ。世界がこの水準に追いつくまで、あるべき姿を輝く繭から発信する。 ここで悠然と待つのが人類愛にかなうと思うが、どうだろう。 2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。 遠慮 あるべき 決意 3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。 4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。 5.講師とふるさとへの思いについて話し合いましょう。
(日本語) 新年、それぞれの始動
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(日本語) ほめ言葉という薪を焚く
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