襲撃事件

1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。

持ち場にもよるが、20年前はスーツを常用する新聞記者はそれほど多くなかったと思う。現場で動きやすい軽装が一般的で、使い込んで、戦友のようになった一着があったものだ。

実際、その薄手のブルゾンは、持ち主の分まで戦っているように見えた。20年前の憲法記念日、朝日新聞の阪神支局が襲撃(しゅうげき)され、記者2人が死傷した。29歳で命を絶たれた小尻知博記者の上着が、支局にある襲撃事件資料室で初めて公開された(3日まで)。

サイズはM。左ポケットのわきに、卵大の穴が開いている。至近距離から放たれた400粒の散弾が、ひとかたまりで脇腹(わきばら)に飛び込んだ跡だ。色あせた青い木綿の生地は、運ばれた病院で切り裂かれ、左半分が褐色(かっしょく)に染まっている。展示ケースに収める前、手にとり、そっと顔を近づけてみた。古着(ふるぎ)のにおいだけがした。

事件の1週間前、統一地方選挙の開票日に支局で撮られた写真が、小尻記者の残像(ざんぞう)として広まった。書棚の前で左手に紙を持ち、はにかむように笑いながら、記者はあのブルゾンを着ている。京都の百貨店で買ったという分身(ぶんしん)は、時を超え、忘れてはならない怒りを発信し続ける。

小尻記者のもう一つの分身、当時2歳だった一人娘はこの春、父親と同じメディアの道に進んだ。一連の朝日新聞襲撃事件はすべて時効となったが、表現と言論の自由を守る闘いに終わりはない。

憲法は明日、施行60年を迎える。その半分も生きられなかった仲間の無念を引き取り、彼のブルゾンを心に羽織って(はおる)歩いてゆこうと思う。

2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。

脇腹

無念

わき

3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。

 

4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。

 

5.講師と襲撃事件について話し合いましょう。

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