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秘密の減点

1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。  近代医学の学校を卒業した最初の女性。そう称されるのが、エリザベス・ブラックウェルである。19世紀に英国から米国に渡り、医学校に入学を願うが、ことごとく断られた。ある博士からは「私どものクラスの紳士たちは、異性が中に入ることを好まないからね」と言われた▼外国に行き、男性に変装して医学を学んだらどうかと言う博士すらいた。ようやく入学が認められた学校でも、歓迎されてはいなかったとベイカー著『世界最初の女性医師』にある ▼女性は医師に向かないと言われた時代があった。残念ながら、あったと過去形にしない大学が日本に存在するようだ。東京医科大の入試で、女子受験者の点数が一律に減点されていた▼女子の合格者を3割以下に抑えるため秘密裏に操作がなされた。「出産や子育てで現場を離れるケースが多く、医師不足を防ぐためだった」という大学関係者の声が本紙にある。働きにくい構造には手をつけず、女性を遠ざける。そんな行動は、この大学だけなのか ▼「ガラスの天井」といえば、女性の昇進を阻む、見えない障壁のことだ。東京医科大では、見えないゲタを男子全員にはかせていた。スタートラインにあってはならない「ガラスのゲタ」。そういえばこの大学には、官僚の息子のための特別のゲタもあったらしい▼医師となったブラックウェルは、貧しい地区に女性と子どものための診療所を開いた。門前払いのままで終わっていたなら、成し遂げられなかった功績であろう。 2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。 成し遂げ すら 3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。   4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。   5.講師とガラスの天井について話し合いましょう。

ふるさとへの思い

1.まずは講師と一緒に文を読んで発音の練習していてください。読んだ後は講師から発音のアドバイスをもらいましょう。 朝日歌壇賞と俳壇賞の二冠を持つオランダ在住の歌人、モーレンカンプふゆこさんの短歌に、〈窓口で法律用語を調べつつ日本国籍破棄を告げけり〉がある。33歳で異国に帰化した際の、凜(りん)とした決意だ。 作者はしかし、森で拾った木の実にまで望郷の念を募らせもする。〈手の中に団栗(どんぐり)といふ故国あり〉。ふゆこさんが思い続ける日本は、いつまでも、海外の同胞が慕う国でいられるだろうか。 パリ駐在から帰国し、3年ぶりに住んだこの国は改めて新鮮だった。朝のホームに整然と並ぶ人たち、静かな満員電車。小ぎれいで安全な街、眠らぬコンビニと自販機。このささやかな日常の安定こそ、守り伝えるべきものに見える。 国籍を捨てて、なお残る祖国とは何だろう。山河や文化、同じ言葉を話す懐かしい人々。その一切がつつがなくあるために、国家の仕組みと約束事がある。軍事同盟が「傘」なら、平和憲法は「繭」のように、日本社会に寄り添って平安を包んできたのではないか。 窮屈な繭を抜け出し、傘の下で舞うチョウになりたいと欲する人もいる。だが、世界の現実に合わせて理想を遠慮すれば、情けない現実が大きくなるだけだ。 朝日俳壇の選者だった石田波郷(はきょう)に、「焦土諷詠(ふうえい)」と称される作品群がある。〈香水の香(か)を焼跡(やけあと)にのこしけり〉。廃虚から書き起こした香り高い志は、四季の美しさや産業技術と並ぶ財産だ。世界がこの水準に追いつくまで、あるべき姿を輝く繭から発信する。 ここで悠然と待つのが人類愛にかなうと思うが、どうだろう。 2.講師に次の表現について説明してもらいましょう。 遠慮 あるべき 決意 3.先学んだ文法と単語を用いて、文を作りましょう。   4.講師から発音のアドバイスを注意しながら、もう一回文を読みましょう。   5.講師とふるさとへの思いについて話し合いましょう。